ハンガリー生活、はじめました

壁画のある生活

2017.02.15
writer:本宮じゅん

ブダペストの中心地的存在ともいえるデアーク・フェレンツ通り駅から少し歩くと、歴史的ユダヤ人地区が広がっている。ヨーロッパ最大規模というシナゴーグを中心にユダヤ教に関連する施設が点在していている一方で、人気のバーやレストランも数多くある。中でも老朽化した建物をポップにアレンジして営業している「廃墟バー」は観光客にも大人気で、夜ともなれば大賑わいだ。世界遺産にも登録された歴史的景観地区とはまた違った魅力が感じられる。

廃墟バー「シンプラ・ケルト」
廃墟バー「シンプラ・ケルト」

聞いたところによると、この地区は資金不足のために戦後の再開発がなかなか進んでいないようで、確かに老朽化した建物や空き地を多く見かける。しかしながら、それらをうまく活かして営業しているバーやクラブも増えている。ボロボロの建物にボロボロの椅子やテーブルが置かれていながらも、なんとも新しくてオシャレな空間になっている。屋台が並ぶ空き地もあり、天気の良い日にオープンエアで飲むビールは格別に美味しい。

そしてその傍らで、建物にダイナミックに描かれた壁画の数々が、この地区の雰囲気をさらに特徴付けている。

斬新なタッチの壁画
斬新なタッチの壁画

実際初めて足を運んだ日に印象に残ったのは、ユダヤ教関連施設でも廃墟バーでもなく、壁画の多さだった。大きくて目立つものもあれば、なかなか気づきにくい場所にもあったりする。家からも歩いて行ける距離なので、いつしか散歩を兼ねて壁画を探しまわり、ひとつひとつ写真に撮って集めていくのが楽しみになっていた。既に十五ヶ所ほど見つけたものの、それでも訪れるたびに新しいものに遭遇するので、もしかしたらまだまだ増え続けているのかもしれない。

一番びっくりしたのが、この建物の側面に描かれた壁画だった。最初遠くから見たとき、それが壁画だということに気づかなかった。屋根と上の階の窓の外に人がいるのを見つけて、あんな高いところで何をしているのか不思議になって近づいて見たところ、壁一面が全部絵だった。それくらい、正面の色合いとデザインから見事に繋がっている。もっと下の方、地上階のお店を先に見ていればすぐに気づいたのかもしれないのだが。

側面の部分が壁画
側面の部分が壁画

ハンガリー語が少しずつわかるようになるにつれて、これらの壁画についての情報もわかるようになってきた。どうやらこの地区が位置するブダペスト7区と民間企業との協業で、建物の防火壁をリノベーションするというプロジェクトによる作品とのこと。アート性が高いだけでなく、火災から護ってくれるという実用性も備えているようだ。

ルービックキユーブの壁画
ルービックキユーブの壁画

シナゴーグの近くで見かけたカラフルな壁画は、近くで見たときには気づかなかったが、後で写真をよく見たところ、巨大な「ルービックキューブ」だった。子どもの頃によくこれで遊んでいたのを思い出した。発明者のルビク・エルネー氏はハンガリー人。左下に"mindig van megoldás és nem is csak egy"と、彼の言葉が書いてある。意味は、「いつでも解決方法はある。ただしそれがひとつとは限らない」。なんだかとても元気付けられる言葉だ。

もしブダペストを訪れる機会があったら、ぜひこの地区にも足を運んでいただきたい。細い通りのあちらこちらを歩いているだけで、新しい発見に出会えることだろう。

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

blog:ドナウの東か、遥かもっと東から
twitter:@motomiyajun3  / Instagram:motomiyajun

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