カミツレとはカモミールのことを指します。カミツレ花エキスは、ジャーマン・カモミール(Matricaria recutita)の花から抽出されたエキスで、整肌・保湿・香料などに使われます。
ローマン・カモミール(Chamaemelum nobile)由来は区別して「ローマカミツレ花エキス」と記載されます。
カモミールの名前は、古代ギリシャ語で「地面の」という意味の chamai と、「りんご」という意味の mēlon に由来し、「大地のリンゴ」とも呼ばれています。
日本には江戸末期にオランダから持ち込まれ、オランダ語の kamille(カミッレ)をカミツレと書いたことからそう発音されるようになりました。漢字では「加密列」と書きます。
| 精油名 | カモミール・ジャーマン |
|---|---|
| 学名 | Matricaria recutita L. (別名:Matricaria chamomilla L.) |
| 科名 | キク科 |
| 形態 | 一年草 |
| 草丈/樹高 | 約30〜60cm、直立して伸びる草本 |
| 主な原産地 | ドイツ、ハンガリー、エジプト、東ヨーロッパなど |
| 抽出部位 | 花 |
| 抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
| 香りのノート | ミドルノート |
| 香りの系統 | フローラル系(ハーバル調を含む) |
| 香りの特徴 | リンゴのように甘い香り |
| 主な成分 | α-ビサボロール、ビサボロールオキシドA/B、マトリシン |
キク科の一年草で草丈の高いハーブ。白い花びらと黄色い中心を持ち、リンゴのような香りがあります。ローマン・カモミールとの違いは、黄色の部分が突き出ていることです。
消化促進・リラックス効果があることからハーブティーとしてよく飲まれています。また、抗炎症作用がある青い成分「カマズレン」を含み、整肌・保湿効果があることからアロマテラピーや化粧品原料としても使用されています。
名前の「Matricaria」は「子宮(matrix)」に由来し、古くから婦人科系の用途に用いられてきました。その名の通り、カモミールは子宮への作用があるとされてきたため、妊娠中はカモミールティーを避けるように指導されることがあります。
紀元前からヨーロッパで薬草として利用され、エジプトでは太陽神への捧げ物とされた記録もあります。中世ヨーロッパでは「万能の薬草」として知られ、鎮静・消化促進・皮膚・粘膜の刺激緩和などの目的で修道院医学にも取り入れられてきました。
| 精油名 | カモミール・ローマン |
|---|---|
| 学名 | Chamaemelum nobile |
| 科名 | キク科 |
| 形態 | 多年草 |
| 草丈/樹高 | 約10〜30cm、地を這うように広がる低草本 |
| 主な原産地 | フランス、イギリス、ブルガリアなど |
| 抽出部位 | 花 |
| 抽出方法 | 水蒸気蒸留法 |
| 香りのノート | ミドルノート |
| 香りの系統 | フローラル系 |
| 香りの特徴 | リンゴのような甘酸っぱさを持つ、あたたかみのある香り |
| 主な成分 | イソブチルアンゲレート、イソアミルアンゲレート、メチルアリルアンゲレート、α-ピネンなど |
キク科の多年草で、横に這うように成長します。芝生(lawn)のように広がる姿から「カモミール・ローン(Camomile Lawn)」とも呼ばれます。白い花びらと黄色い中心を持ちジャーマン・カモミールと似ていますが、黄色の部分はジャーマンに比べて出ていません。
学名の「nobile」は「高貴な」を意味し、薬草としての価値の高さからこの名がつきました。古代ローマ時代より芳香植物として重宝され、ビールや薬酒の香りづけにも用いられました。また、中世では「地を這う薬草」として修道院庭園や薬草庭園に植えられ、療養者が香りの中を歩けるようにカモミールの芝生が設けられました。
胃腸の働きを整えることからハーブティーとして使用されることが多く、鎮静・鎮痙作用のあるエステル類を豊富に含む精油はアロマテラピーとしても用いられています。また、緊張緩和作用やリラックス目的で入浴剤としても人気があります。
ビアトリクス・ポターの『ピーター・ラビット』(The Tale of Peter Rabbit, 1902)では、畑でいたずらをしておなかをこわしてしまったピーターに、母親がカモミールティーを与える場面があります。カモミールが「消化を助け、体を落ち着けるハーブ」として民間療法的に用いられていたことを示す文化的エピソードです。
『ピーター・ラビット』に出てくるカモミールは、ジャーマンかローマンか記述がありません。作者の住むイギリスではローマンが主流なので、ローマンかもしれません。ジャーマンはその名の通りドイツで一般的に使用されています。