ほんのかくし味

St.Valentine's Day それは愛の一日

2016.02.03
writer:豊田希

お正月が終わると、街に愛があふれる。

そう、バレンタインデーである。クリスマスの興奮冷めやらぬパティスリーやショコラトリーは、間髪入れずにオトメゴコロを刺激する。想いを寄せる人に、家族に、そして近年では女性同士や自分のために、ジュエリーのように美しい高級品を吟味する。私もバレンタイン前に開催されるチョコレートのイベントやデパートの催事を調べては足を運ぶ。買うのはほとんどが自分のためのものだけど。手作りに挑戦しようとする人の応援グッズも多種多様。製菓道具店や製菓材料店をのぞくと、ここでも女性達の真剣なまなざしに出会い、「がんばって!」と応援したくなる。

そもそもバレンタインデーって?

ときは紀元269年ローマ帝国時代の戦下に遡る。皇帝は「愛する人を故郷に残していると士気が下がる」と、兵士の結婚を禁止。それに異を唱えたバレンティヌス司教(聖バレンタイン)は秘密裏に兵士達の結婚に尽力。彼は捕らえられ、処刑されてしまう。人々の愛のため生きた彼が殉教したその日こそが2月14日。この日は「聖バレンタインデー」として「愛の一日」となった、といわれている。愛の日の陰には、ひとりの男の勇気ある行動があったというわけだ。

バレンタイン=チョコレートは日本だけ?!

日本では戦後まもない1958年。製菓業界と流通業界は、販売促進のために、ヨーロッパの文化に目を向けていた。その中で東京のチョコレートメーカーが打ったキャッチコピー。

「年に一度。女性から男性に愛の告白を!」

奥ゆかしきことが美徳とされた当時の日本女性にとって、どれほど特別に感じたことか!その流行はいつしか文化となり、バレンタインとチョコレートの甘い関係はこれからもずっと続いていくのだろう。

愛の国フランス・パリのバレンタインデー

いつも愛をささやいている(と思われている)パリジャンやパリジェンヌにとっても、バレンタインデーはやはり特別な一日だ。街角に花屋のベンダーが並ぶ。情熱的な赤いバラ一輪を選ぶ人もあれば、可憐なブーケを選ぶ人もあり。パティスリーには赤やピンク、ハートの形をしたお菓子やチョコレートが並び、ウィンドウやショーケースを華やかに彩る。カフェでは恋人達が愛を語りキスをする。家族は共にケーキを囲み、笑顔があふれる。この日のパリは、まさにばら色の空気に染まる。

バレンタインデーのほんのかくし味。

美しいパッケージの中に大切に包まれた愛の宝石。自らのために選んだチョコレート達も美しく、また美しい味がする。なんと穏やかな瞬間か。ぜいたくな口溶けにひととき身を預けながら、この愛の日の由来をいまいちど思い出す。

バレンタインデーって世界中が幸福を願う日なんだ、と。同じ空でつながった戦下の人々の心に、「愛の一日」が訪れますように、と。

口の中で優雅に溶けるチョコレートが、より濃厚で幸せな味わいになるはずだ。

writer:豊田希

勝負料理研究家。自らの料理教室Studio CREATABLEで、日常からおもてなしまで季節に合わせた料理を提案するほか、クックパッド料理教室にも加盟し、基礎に特化したレッスンを開講中。 2004年から料理研究家としての研鑽を積む。専門はフランス菓子。パリへのお菓子留学を通して、街、人、食、文化に強く惹かれて以来、エスプリをキャッチするため毎年パリを訪れるパリ愛好家でもある。 「勝負料理はありますか?」がテーマ。趣味は、食べ歩き。街歩き。観劇。

HP:Studio CREATABLE / クックパッド料理教室

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