ハンガリー生活、はじめました
クレーメシュのある生活
writer:本宮じゅん
毎日良い天気で外を散歩するのが楽しくなってきた、というのはつかの間だった。日本は梅雨の季節、ハンガリーでは全国的に気温が三十度を超す日が続くようになり、六月というのにすでに夏まっさかり。湿度は低いので日陰にいると過ごしやすいものの、日向では太陽の光は容赦無く照りつけてきて、もうすっかり日焼けしてしまったくらいだ。あまりに暑くて、連日街中のアイスクリームの屋台の誘惑に負け続けているし、カフェに寄ってついつい長時間こもってしまうことも多くなってきた。
ここ最近カフェで必ずといってもいいほど注文しているのが、「クレーメシュ(Krémes)」。薄いパイのような生地でクリームが挟んであり、表面にたっぷりと粉砂糖が振りかけてあるケーキだ。大きく作ってあるのを、四角く切って売られている。ほんのりとバニラが香る中のクリームは、ナイフで切っても崩れない程度に硬さがあって、メレンゲが入っているからか、いわゆるカスタードクリームよりも甘さが控えめで全然しつこくない。サクサクした食感の生地との相性も抜群だ。そのため、暑い夏でも美味しくいただくことができる。
このケーキ、私はハンガリーに来て初めて見て食べたわけなのだが、実際はハンガリーだけではなくクロアチアやスロヴァキア、スロベニアなど、中央ヨーロッパの諸国に広まっていて、それぞれの国の言葉で名前があるようだ。先日クロアチアに旅行した際に入ったカフェでも「クレムシュニタ」という名前でメニューに載っていた。普段ハンガリーで食べているものと大きな違いは感じなかったのだけど、店によってのレシピの違いはあるかもしれない。
ちなみに、中央ヨーロッパ諸国で共通のケーキやお菓子はクレーメシュだけでなくて、他にもいろいろと耳にする。周辺の国々を旅行して、各地で食べ比べしてみるのも面白そうだ。
オーソドックスなクレーメシュはもちろん、アーモンドやキャラメルがトッピングされているもの、フルーツのジャムが一緒に挟んであるものなど、さまざまなバリエーションのクレーメシュにも出会える。カフェに次々とやってくるお客さんの中には、こうしたクレーメシュを数人分テイクアウトしている人も多い。お孫さんとおぼしき小さな子供と一緒に袋いっぱいに買って帰る婦人を見ていると、その嬉しそうな様子がとても微笑ましくて、こちらまで幸せな気分になる。この美味しさ、ぜひ日本にもお届けしたい。
Rétesbolt
6720 Szeged, Kígyó utca 1, Hungary
+36-20-954-0304
営業時間:月~金 8:00~17:00 土 8:00~13:00(日曜定休)
A Cappella Cukrászda és Kávéház
6762 Szeged, Kárász utca 6, Hungary
+36-62-559-966
営業時間:月~日 7:00~22:00
writer:本宮じゅん
2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住した新米ライター。大学在学中に一年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算十四年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。