HAPPYさがしてヨーロッパ
電子レンジをさがして
writer:Fumi
仕事柄、色々なキッチンを見る機会がある。キッチンを見るとその人が見えてくる。
突然ですがクイズです。日本のキッチンにあってドイツのキッチンにないものはなんでしょう?さっさと答えを言うと、それは電子レンジだ。「え!」と思った人は何人くらいいるだろう。最近では電子レンジを見ると「え!」と思ってしまうほどになった。
日本で買うレシピ本はだいたい電子レンジを使うものが多い。「電子レンジで簡単」などと言うキャッチフレーズのものが多いが、ドイツでは残念ながらそのようなレシピ本は選択肢から除外することになる。逆にヨーロッパのレシピに、電子レンジを使用したものはほぼないと言っていいだろう。電子レンジのない生活が普通なのだ。家電屋さんに行っても電子レンジは数種類しかなく、もはや選べるという状況ではない。
オーガニックで自然派なイメージのドイツ人の中には、電子レンジにアレルギー反応を示す人が多い。ドイツ人が電子レンジを毛嫌いするその理由はというと…。
- 怠惰な人の象徴である
- 電磁波が体に良いわけがない
- 食品の栄養を破壊してしまう
ということのようだ。確かに星付きレストランの厨房から「チーン」と聞こえてきたら気持ちが冷める。稼働中の電子レンジの前には近寄らない、という徹底ぶりの人もいる。さすが森の人、ドイツ人。
そんなドイツでは、冷めてしまった作り置きなどは、お鍋か蒸し器で温めればいいし、そもそも電子レンジがあったらいいなあと思うのはご飯をチンしたい、という時くらいだろうか。それだけの為に重くてかさばる電化製品を増やす必要は確かにない。
さらに気づくのがオーブントースターもないということ。あるのは、食パンが飛び出るタイプの「トーストする」という機能のみに特化したトースターだけだ。
所変われば品変わる。ごった煮料理の多いドイツでは、ル・クルーゼ(LE CREUSET)やストウブ(STAUB)などの厚手の鍋「ココット」が活躍する。電子レンジ並みに重く、洗うのにも腰が抜けそうなのだが、これを手に入れて以来、パスタの水を茹でる時にも使っている。
一度買ったら生涯使えて、熱の伝わりが飛び抜けて良く省エネである、などドイツ人が好きそうな要素が備わっているココット。ご飯も土鍋並みに美味しく炊けるそうなので、電子レンジのことはココットで忘れようかと思う。
writer:Fumi
ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。