HAPPYさがしてヨーロッパ
究極の香りをさがして
writer:Fumi
前回は欧州の香水事情にちょっと触れてみた。掘ってみたら予想以上に疑問が出て来たので、今回は続編として、地域別、年代別の香りの使い分けについて少し書いてみたいと思う。
香りの使い分け:地域別編
まず、ドイツ人は香水への興味が薄いのか、という点について。これははっきり言って、フランス人の方がドイツ人よりいい香りをさせている。
香り以前に触れたいことの一つに、フランス人が年齢を重ねるにつれて女らしさを増していくのに対し、ドイツ人は中性感を増していくことを言っておきたい。これは女性だけに関わらず男性にも起こりうることであり、自転車で前を走る人の性別がわからない、ということはよくある。夫婦で洋服を兼用しているのではないか、というカップルも多い。ドイツで歳をとっていく私としては考えさせられる問題である。よってドイツ人女性から麗しい香りがしてくることは滅多にないと言っていい。
ベルリンでいい香りの源はトルコ人男性ということが多い。特に若い世代はアフターシェーブローションか、整髪剤、オーデコロンを欠かさないようにしているらしい。私は香る男が好きなので、トルコ人移民地区に住む身としては結構嬉しいことだ。
香りの使い分け:年代別編
さて、次に世代別に香りは違うのか、という点について。みなさんの中に、昔、女子中高生の間で流行っていた、石鹸の香りのする香水『PTISENBON(プチ・サンボン)』を覚えている方はいるであろうか。「いい香りのおチビさん(Petit sens bon)」という名前からわかるように、赤ちゃん・幼児の香水デビュー用の製品である。初めての香りとして記憶しているフランス人は多いようだが、幼いということを喜ばしくないとするフランス文化では、この香りをつけているティーンエイジャーはいない。
ママの真似をしたがり始める六歳以上の女の子に発売されたのが『GRANSENBON(グラン・サンボン)』で、こちらは「いい香りのおませさん(Grand sens bon)」。これも日本の女子中高生にうけていたが、同じくこの香りを好むティーンエイジャーのおませさんはフランスにはいない。
男の子たちが整髪剤デビューを始める頃、女の子はシャネルやエルメスに目覚めるようだ。いきなり『No. 5(ナンバー5)』などをつけてしまうのではなく『CHANCE(チャンス)』など爽やかな香りから始める。キャラメルやヴァニラなどの甘い香りを好んでつけている女子高生も多い。
二十代・三十代になると自分の香り探しになり、四十代・五十代では大人の品が香る、究極の『私の香り』のみをつけるようになる。
ゲランの名作『MITSOUKO(ミツコ)』などが似合ってくる世代、六十代にもなればもう香りのプロと言えるマダムでいっぱいだ。姿勢を伸ばして歩く上品なおばあちゃんは、入れ歯の匂いなどする気配を感じさせない。手首や耳の後ろにそっと吹きかけることの多い香水だが、うなじや膝の後ろなど、香りを効果的に広げる工夫を知り尽くしているのだろう。脈がダイナミックに打つ位置につけるといいというので、これはもう解剖学から勉強しなおしてみようかと思う。
writer:Fumi
ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。