ハンガリー生活、はじめました
キャベツのある生活
writer: 本宮じゅん
ハンガリーの首都ブダペストの近郊、ちょうどリスト・フェレンツ国際空港の近くに、ヴェチェーシュ(Vecsés)という町がある。この町はキャベツの名産地として知られていて、ブダペストの市場やスーパーでも、ヴェチェーシュ産のキャベツをよく目にする。ハンガリー語で「キャベツ」は「カーポスタ(káposzta)」。毎年九月中旬には、ヴェチェーシュで「カーポスタフェスト(Káposztafeszt)」というキャベツの収穫祭が開催される。ハンガリーでの生活を始めてまだ一年と数ヶ月の私にとっても、既に毎年楽しみなイベントになっている。
キャベツの収穫祭「カーポスタフェスト」
お祭りの目玉のひとつが、日曜日のお昼に始まるパレード。キャベツ農家や保育園など、さまざまなトラクターが順々に会場内を行進する。いずれもトラクターと荷台にキャベツをモチーフにしたデコレーションが施されていて、それを見ているだけでも飽きない。とあるキャベツ農家のトラクターの荷台には、収穫されたキャベツがうず高く積まれていて、そのてっぺんにはどこか誇らしげな顔をしたキャベツがどっしりと構えていた。また、保育園のトラクターの荷台にはまだ幼い子どもたちが乗っていて、頭に本物のキャベツの葉やそれを模した緑の帽子を被っていた。その可愛らしい様子がとても微笑ましかった。
キャベツ料理といえば
ハンガリーのキャベツは、日本のものと比べてとても固い。あまりに固く葉っぱもぎっしりしているので、私はまだ生で食べたことがない。実際こちらのキャベツ料理では、発酵させたり煮込んだりして柔らかくしているものを使う。お祭りの屋台でも、千切りにしたキャベツを乳酸菌で発酵させた「シャヴァニュー・カーポスタ(savanyú káposzta)」などが売られていた。それをパプリカのピクルスの中に詰めるというワークショップが開催されていて、私も張り切って参加してきた。
お店で売られているものは、白いパプリカのピクルスに黒胡椒で目を、赤パプリカで口をかたどって、スマイルフェイスに見立てられている。プラスチックのケース越しにこちらに微笑みかけている顔の一つひとつが、みんな違う表情をしているのが面白い。
シャヴァニュー・カーポスタは酸味が強くて、初めて食べた時は口の中に広がる刺激にびっくりしたものだった。ただ食べ続けているうちにだんだんその味わいがクセになってきて、今ではすっかり肉料理の付け合わせに欠かせない存在となっている。
一番大好きなハンガリー料理
伝統的なハンガリー料理の一つに、「テルテット・カーポスタ(töltött káposzta)」というロールキャベツ料理がある。キャベツの葉に挽き肉やお米などを詰めて巻き、シャヴァニュー・カーポスタとパプリカ粉、ベーコンの脂身、サワークリームなどと一緒に煮込む。柔らかくなったキャベツの食感と酸味と挽き肉の旨みの組み合わせが絶妙で、私が一番大好きなハンガリー料理でもある。レストランのメニューで見つけたら必ずといってもいいほど注文しているくらいだ。
お祭りの屋台にもよく登場しており、気軽に食べることができる。そういえば、もうすぐブダペストはクリスマスマーケットの季節。今から楽しみで仕方がない。
ヴェチェーシ・カーポスタフェスト(Vecsési Káposztafeszt)
※毎年九月下旬の土日の二日間開催
writer:本宮じゅん
2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。