HAPPYさがしてヨーロッパ
光をさがして
writer:Fumi
暗くて寒い二月、どこへ避寒しようかと思っていたが、行く先も決まらずベルリンに留まることになってしまった。が、はて、あまり寒くならない。そうしていると日本から、大雪で寒いとの悲鳴が聞こえてきた。
ドイツ・ベルリンの寒さというのは格別で、私が初めてこの地に足を踏み入れた時、氷点下二十三度だったことは忘れられない。雪国の寒さではなく、ロシアなどで人々が毛皮の帽子を被っているような切ない寒さなのである。それが今年はどうしたことか、今日もやや青空の六度ということだ。
ベルリンでは、氷点下で太陽の姿もない日が数週間続くことも珍しくないのだが、そんな日々に人々は何をして過ごしているのか。
相変わらず自転車に乗っている。私もその例にもれずダウンコートを着て、毛皮のついた手袋をして、耳あてをして東奔西走している。特に雪が降って地面が凍り付いてしまった時は、除雪除氷された車道を走っている方が歩道でツルツル滑り歩くより安全なこともある。
ベルリンは自転車大国であり、灼熱の太陽の下でも自転車、雨が降っても自転車、雪が降ってももちろん自転車。幹線道路に並行して地下鉄も走っているのだが、電車を待つ時間を考えると、スイスイ進む自転車の方が速いことも多く、二十駅くらいならベルリン人は平気で自転車を乗り回す。自転車で一時間近く走っていると言うと日本人は驚くが、ベルリン人に言わせると満員の通勤電車に一時間近く揺られている日本人はなんと哀れで、過労死するのもしょうがない、と同情されるのである。
太陽がちらりとでも姿を現わそうものなら、屋外のテラス席でカフェ。ビタミンD補給のためなのだろうか。サングラスをかけて、あらかじめテラス席に用意されている毛布にくるまってコーヒーやお茶で温まる。
太陽のない日が数日、いや数週間続くと鬱になる、という話はよく聞いていたが、「まあそんな大げさな」と聞き流していた。しかし、実際に毎年暗くて寒い冬を過ごしていると、他人事で済ますわけにはいかなくなってきた。今は、寒くても太陽さえ出ていればとりあえず外へ出る。
年が明けると祭事が一挙になくなってしまい、モノトーンな日常が新年と共にスタートするのがヨーロッパ。口実を作ってお友達を家に呼んで午後を一緒に過ごしたり、夕飯を食べたりすることが増える。
例えば二月に入ってすぐの二日は「クレープの日」。ファンシーな名前だが、カトリックに由縁がある祭日だ。翌日に当たる日本の節分と同じ意味を持ち、近く春を迎えるための区切りで、クリスマス期間の正式な終わりでもある。春を迎える光のお祭りということで、丸く金色に輝く太陽をクレープに見立てて祝う。私も今年はお友達を呼んでこれを祝った。というより、クレープが食べたかった、というのが実際のところではあるが。
writer:Fumi
ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。