ハンガリー生活、はじめました
「国際女性デー」のある生活
writer: 本宮じゅん
このコラムが公開される頃、日本はバレンタインデーから一か月後のホワイトデー。男性の皆様はプレゼント探しにそわそわとされていたことだろう。そして、日本のバレンタインデーがどれだけ盛り上がったのか、その様子もなんとなく想像できる。
一方、ハンガリーではバレンタインデーはそれほど盛り上がらず、ホワイトデーの習慣もない。けれども、この季節に男性から女性に花を贈るという習慣がある。それが、3月8日の「国際女性デー」だ。
「国際女性デー」とは
日本でもここ数年「国際女性デー」が徐々に浸透し始めていると聞いている。元々はアメリカが起源。1904年3月8日、ニューヨークで女性労働者たちによる婦人参政権を求めるデモが行われたことに始まるという。女性の社会的平等を求める流れは世界に広まり、1975年、国連が毎年この日を「国際女性デー」と制定した。以後四十年以上の歴史を持つ。
制定された経緯には、1917年のロシア二月革命の影響もあるという。この革命が起こったのはロシア旧暦の2月23日、つまり現在のグレゴリオ暦で3月8日。当時の首都ペトログラードで、女性労働者たちによる食料配給の改善を求めるデモが大規模な蜂起へと拡大し、帝政の崩壊へと繋がった歴史的事件だ。そして1966年以降、この日はロシアの祝日となる。その後時代とともに政治色は消えていき、今のように女性に感謝を伝える日となった。
美しい花と愛に溢れる日
第二次世界大戦後、旧ソ連に占領されていたこともあり、ハンガリーもロシアの「国際女性デー」の影響を強く受けている。3月8日が近づくと、街の花屋のディスプレイがますます豪華になるだけでなく、大きな広場にも色とりどりの花を売る露店が並び始める。ちょうど気温も上がり、晴れの日が続くようになってきたばかりで、明るい日差しの中こうした花々が一層美しく見えた。
当日は男性が周りの女性(家族、恋人、同僚など)に花を贈る、というのが一般的だが、女性同士贈り合うこともあるし、花の代わりにチョコレートなどを贈ることもある。ただ残念ながら、男性陣は何ももらえないようだ。
私にもその日はやってきた
今年は、とあるイベントでハンガリー中部のケチケメートという街を訪れていた。お昼に入ったレストランでは、隣に同じ職場のグループとおぼしき団体客がいて、鉢植えの花を女性陣にプレゼントしていたのが見えた。その時に何もなかったのですっかり忘れていたのだが、イベント会場にいる途中に思いがけず綺麗なバラの花をいただいた。受け取った時は、あまりに感激して涙が出そうになってしまった。
ハンガリーに来て二回目の春。私にとっても「国際女性デー」は特別な日となりつつある。
writer:本宮じゅん
2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。