HAPPYさがしてヨーロッパ
助産師さんをさがして
writer:Fumi
ロイヤル・ベビーが誕生したニュースが全世界に流れた。出産を経験した経産婦ならきっと耳を疑ったに違いないキャサリン妃の退院時間。なんと出産から七時間後だという。
私はずっと疑問に思っていたのだが、出産はメイクを落とさないと挑めないのか、と。新生児と喜びのツーショットに写る母親たちは、ノーメイクでボロボロでヨタヨタな姿というのが私の印象だ。カメラの前に登場したキャサリン妃はとっくの昔に産褥期を終えたような華々しさだった。
イギリスではほとんどの女性が、出産後一泊もせず帰宅するのが定番だという。キャサリン妃の分娩室スイートが一泊五十万円以上する、というのが帰宅の理由では決してないだろう。こちらドイツでは三泊するのが普通だ。
ドイツでは妊娠中から出産まで、特別な精密検査を除いては全ての医療費が無料だ。諸々のビタミン剤はもちろん、脚のむくみ対策の着圧タイツもオーダーメイドできたり、出産準備教室、水中分娩や、万が一の入院延長も全て保険がカバーしてくれる。
医療的な面で色々支えてもらえるのはもちろん嬉しいが、恐らくなりたてほやほやの母親が何より嬉しい無料のケアは、助産師さんの存在ではないだろうか。病院で出産の手助けをしてくれる人、というだけではないのだ。
ドイツ語で助産師さんは「へバメ」
ドイツ語で「ヘバメ」と呼ばれる助産師さんは、出産までは産婦人科医と交代で妊娠の経過を診てくれる。出産して退院直後から十日間は、毎日自宅まで通ってきてくれ、母体と新生児の面倒を徹底的に見てくれるのだ。授乳指導、赤ちゃんマッサージ、お風呂の入れ方から、母体回復のエクササイズなどもしてくれる。
これがあるとないとでは、ずいぶんと産後の生活が変わってくることもあり、妊婦がまず探し始めるのがこれらのケアを担当してくれる専属のへバメさん。需要よりもはるかに供給が少ないために早いうちに見つけないといけない。
自宅訪問だけでなく、電話相談も受け付けてくれる。中には分娩にも付き添うへバメさんもおり、こうなるといつ呼ばれるかわからない二十四時間体制だ。それだけ誰かの役に立ちたいという気持ちが人一倍強いのと、子供が大好きなのだろう。子供が苦手な私には、保育士の次くらいになれない職業だ。本当に尊敬する。
五月五日は助産師の日。日本ではこどもの日であることを知ったら、きっと喜んでくれそうだ。
writer:Fumi
ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。