HAPPYさがしてヨーロッパ
太陽をさがして
writer:Fumi
人々が浮かれる季節が近づいてきた。今年は悪天候が続き、6月も中旬だというのに冬のコートがなかなかしまえずにいる。豪雨の合間に25度を超える日があろうものなら、皆、ノースリーブにビーチサンダルで日向に寝転んでいる。『美白』という言葉はヨーロッパ人の辞書にはないようだ。
というのも夏のこんがり小麦色の肌は美と栄光と裕福さの象徴。フランスのブルジョアマダムの夏といえば、サングラスに大振りのアクセサリー、しっかり焼けた美脚とデコルテを露出し、太陽の下でオホホホと優雅に笑う姿が眩しい。
彼女達の小麦肌にはこれまたブランド性が秘められており、どこのどのビーチで焼いたのか、がとても大切である。その辺の公園で焼きました、などありえないのだ。
というわけで夏に白いままでいると、休暇もとれないほど貧乏暇なしなのか、と心配されてしまうのである。赤くなるだけでうまく焼けない、というドイツ人の悩みはこの季節とても深刻だ。
肌を焼くために、といってもいいほど、人々はこぞって休暇へ出て行く。お勤めの人には最低でも30日間の有給休暇が保証されている。そしてもちろん与えられた休暇を消化するのが当然だ。おまけにみんな夏にまとめて休暇を消化するものだから街も当然空っぽになる。
レストランなどのお店も休暇をとってしまうために、8月に都会に残っていると本当に惨めな気分になってくる。取り残された色白の貧乏人。
勤勉なドイツ人は日差しの誘惑にも負けず、働こうという意識が隣国民よりは高いのか、ベルリンでは寂しさはそれほど感じられない。しかし、ウィーン人は近郊の大自然と隣国の海辺へ、パリ人は南仏などのリゾート地へと、7・8月の民族大移動が見られる。
6月に入ると職場での話題は休暇でどこへ行くか、でもちきりだ。家庭でも旅行のパンフレットやらガイドブックが机上に広がる。
9月に仕事に復帰したらいかに小麦色を見せつけるか、がとても大切なのである。ヨーロッパの人にとって日焼け対策というのは、焼かないための手段ではなく、いかに安全にこんがり焼くか、というのが焦点なのだ。
柑橘系の果物は、焼くにしても焼かないにしてもこの季節是非気をつけたい。紫外線を吸収しやすい肌にしてしまうからだ。特にグレープフルーツはジュースからでも摂取しないようにしたい。美人は短命というけれど、皮膚ガンだけは避けたいですものね。
writer:Fumi
ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンとウィーンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。
HP:Gourmie / Instagram: gourmiefumi