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ハンガリー生活、はじめました

ドナウ川のある生活

2016.09.14
writer:本宮じゅん

先ほどiPhoneに保存していた写真を整理していたところ、初めてハンガリーの首都ブダペストを訪れた日から、ちょうど一年経ったことに気付いた。遅い夏休みの旅行でオーストリアのウィーンからブダペストに入り、街に流れるドナウ川の壮大さ、そして『ドナウの真珠』とも呼ばれるブダペストの街そのものの美しさに心を奪われてしまった瞬間は、今でもはっきりと覚えている。

その次の年の夏、日本でお世話になった人々や住み慣れた街やその他諸々の未練を残しながら、私はブダペストでの生活を始めることとなった。それから約一ヶ月。最初のうちよくわからなかった言葉や地理感覚も、少しずつ自分のものとして身に付いている実感はある。それでもまだまだ初心者気分のまま、この街で暮らしている。

鎖橋と王宮
鎖橋と王宮

ブダペストは元々ドナウ川西岸に広がるオーブダ、ブダ、東岸に広がるペシュトの三つの地域が統合されて一つになった街。文字通り、ドナウ川を中心に形成されている街だ。両河岸の美しい歴史地区をはじめとした一帯は、『ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り』として世界遺産に登録されている。

天気の良い日、ドナウ川のほとりは贅沢な散歩コースになる。夏の直射日光は肌を刺すような暑さだけれども、カラッとした空気と心地よい風でむしろ快適なくらいだ。

ペシュト側から対岸に王宮のあるブダの丘を眺め、川を行き来する観光船を眺め、『鎖橋』にたどり着く。橋のたもとを護るライオン像が何か話しかけてくれているような気がする。ある時は「こんにちは」、ある時は「元気かい?」、ある時は「今日もお疲れさま」と。このライオン像には舌がないように見えるのだけど、実際は口の奥に彫られているという。どこにあるのか探したいのだけど、高い所にいるのでなかなか届かない。

鎖橋の向こうのブダの丘には、王宮以外にも見所が多い。特に尖塔と回廊から成る白亜の美しい『漁夫の砦』は、各国からの観光客でいつも賑わっている。

漁夫の砦
漁夫の砦
 

二十世紀初め、この地域の美化計画の一環として建造したこの砦は、元々ドナウ川の漁師組合が守り、かつて魚の市場が立っていた場所ということにちなんでその名が付けられたという。当時の名残は少しも感じないのだが、テラスからの眺めは最高だ。

漁夫の砦からの眺め
漁夫の砦からの眺め

今度は対岸にペシュト側を眺める。ペシュト側はほとんどが平地なので、割と遠くまで見渡せる。ここに来るといつも日本人旅行客の団体に遭遇する。日本語の会話が聞こえてくると少しだけホッとする。失礼になってしまうから、会話の内容までは聞かないようにしている。それでもここで偶然誰か知っている人に出会えたらいいのに、と微かな期待を抱いてみたりしている。

川岸に見えるひときわ巨大で宮殿のような豪華絢爛な建物は、ハンガリーの立法府、『国会議事堂』だ。

国会議事堂
国会議事堂

こちらも二十世紀初めに建設された、ドームを中央に美しく左右対称にファサードが広がる『ネオゴシック』という建築様式の建物。全長は269mもあり、高さは96mとブダペストで最も高い建物の一つだ。ちなみにドナウ川に面しているこちらの面は実は裏面で、正面玄関はその反対側にある、ということを最近になって知った。確かに入口はどこにも見えない。

『国会議事堂』の他にもう一つ、ブダペストで最も高い建物がある。それが『聖イシュトヴァーン大聖堂』だ。こちらもペシュト側、先ほどの『鎖橋』の近くにあり、高さは96m。王宮の丘からは、ドームとその両隣の尖塔の上の方だけが見える。

聖イシュトヴァーン大聖堂
聖イシュトヴァーン大聖堂

ハンガリー初代国王イシュトヴァーン一世を祀るために十九世紀半ばに建設が始められたが、完成したのは二十世紀の初め。ちょうど『漁夫の砦』や『国会議事堂』と同じ時期で、当時は各地で大規模な工事が行われていたことが伺える。そして、まだまだ街は成長を続けている。

毎年8月20日は、イシュトヴァーン一世が列聖された日にちなみ、ハンガリーの建国記念日『聖イシュトヴァーンの日』として祝日となっている。この日は朝から街全体がお祭りモードとなり、どこに行っても人・人・人で大混雑だ。メインイベントは夜九時から始まるドナウ川上の花火大会。ライトアップされた夜景に、天高く打ち上がる花火がダイナミックかつ華麗に彩りを添える。

花火1

日本の花火大会にはすっかり乗り遅れてしまったのだが、間近で美しく咲かせる数々の花火に魅了されているうちに、やっぱりここに来て良かったのだと実感した。

『聖イシュトヴァーンの日』が終わると街は一気に夏の終わりの雰囲気となり、空気にもどこか秋の気配を感じるようになると聞いていたものの、今年に限っては九月に入っても気温三十度を超える日も続き、もう少しだけ夏の余韻に浸っている。

これから秋を迎え、冬になり、そして春と、季節を追うごとにドナウ川とこの街はどのような表情を見せてくれるのだろう。今から心を躍らせている。

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

blog:ドナウの東か、遥かもっと東から
twitter:@motomiyajun3  / Instagram:motomiyajun

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