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アロマと石鹸の物語

ラベンダーの物語

2017.03.30
writer:AYAMI

小さな頃、祖母の家に行ったら北海道土産というラベンダーのサシェが飾られていた。少し前から飾られていたからか、ちょっと酸味がかった香りがしたラベンダーは、私の中で「おばあちゃんの香り」として記憶に焼き付いていた。それから何十年も経った頃、クロアチアでラベンダーのサシェに出会った。クロアチアはラベンダーが雑草のように生えていて、ラベンダーの精油(アロマオイル)も大量に生産されている。収穫間もないラベンダーのサシェは、祖母のサシェと全く違い、甘く丸みを帯びた香りだった。

ラベンダーのサシェ
ラベンダーのサシェ

ラベンダーがきっかけとなったアロマテラピー

乾いて痩せた土地でも栽培が簡単で、摘んでも色あせず香りが続くラベンダーは、昔から多くの国で栽培され活用されてきた。古代エジプトでは、ミイラを包む布をラベンダー水で浸し、遺体が傷むのを防いだ(a)。ローマの上流階級の人々は、ラベンダーの花を浴槽に浮かべて入浴を楽しんだという(a)。このことから、ラベンダーはラテン語の「洗う(lavare)」という言葉に由来すると言われている(b)。またローマ人は分娩の際、妊婦の周りでラベンダーを焚いたという(b)。ラベンダーに鎮静作用があることを当時の人々は経験的に知っていたのだろう。ラベンダーはローマ兵士によってヨーロッパ中に広まり、13~14世紀になると修道院の薬草園の定番植物となる(b)

中世になりペストが大流行すると、ラベンダーを家や教会の床に撒いて殺菌した(b)。16世紀、エリザベス王朝時代になると、貴族たちの間でハーブガーデンを作り、庭先で精油を蒸留して、自家製の化粧水や石鹸、サシェやポマンダーなどを作ることが流行の最先端となっていった(c)。エリザベス女王もラベンダーの砂糖漬けやジャムを好んだと言われており(c)(d)、また貴族の女性たちの間ではスカートの裾にラベンダーのサシェを縫い付けることが流行った(c)。ちなみに最近、日本の大手メーカーから発売された天然成分100%を謳う防虫剤には、ラベンダーの精油が配合されている。昔の貴族たちも、サシェを箪笥の中に入れ、服に虫がつくのを防いだという(c)

英国の黄金時代を気づいたエリザベス女王
英国の黄金時代を築いたエリザベス女王

エリザベス女王に『新本草書(A New Herball)』を献上した植物学の父ウィリアム・ターナーは、ラベンダーを「頭を休めるためのハーブ」と位置づけ、気付薬や精神的に弱っている患者をリフレッシュさせるために使用することを薦めた(b)。ロンドンに薬草園を開いたジョン・ジェラードによると、ラベンダーは情熱を抑える作用(恐らく鎮静作用を指す)があるため、「貞節を守るハーブ」だと言う(b)。これを逆手に、淑女を装った娼婦たちは、ラベンダーの香水をつけて客引きをしていたという記録が残っている(c)

このようにラベンダーは、当時の人々の生活や伝統療法と密着していたが、18世紀後半の産業革命をもって、イギリスでのハーブと人々の蜜月関係に幕が下ろされる。一方フランスでは、産業革命が遅れたこともあり、ハーブの伝統療法が細々と守られた。第一次世界大戦になると、フランス軍医は伝統的に殺菌に使われてきたラベンダーを、負傷した兵士の傷に使用した(b)。薬が足りなかった戦争特有の事情だが、これによってラベンダーの殺菌作用が注目され、アロマの臨床研究を発展させることになる。

そしてここに転機がやって来る。19世紀、フランス人のルネ・モーリス・ガットフォセは、父親の経営する化粧品会社で精油の研究をしていた。ある日、実験中に手に大やけどを負ってしまったガットフォセは、ラベンダー油で洗浄したところ、壊疽していた傷が治ったという体験をした(g)。これに驚いたガットフォセは1937年、『アロマテラピー』という著作を発表し、精油の薬理効果を世に知らしめる。彼の命名した「アロマテラピー」のこの後の発展は、言うまでもないだろう。

ラベンダーには様々な種がある

野生のラベンダーは交雑を重ね、現在では様々な種のラベンダーがある。ラベンダーは全体として、抗菌作用や抗炎症作用に優れている。その中でも甘く芳醇な香りが強い種は、リラックス作用が強い(e)。一般的に出回っている種はこの甘いもので、イングリッシュラベンダー(ラベンダー・コモンラベンダー・真正ラベンダーとも呼ばれる、学名はLavendula augustifolia)だ。入眠効果や、認知機能の若返りを期待するならこの種を使うと良い。

一方、スーッとした香りが強い種は、リフレッシュ作用があり、虫を寄せ付けない効果や花粉症など呼吸器系のトラブル・気管支系のトラブルに優れている(e)。これらはスパイクラベンダー(学名:Lavandula latifolia)や、ラバンジン(学名:Lavandula hybrida)と呼ばれる。ラバンジンは、イングリッシュラベンダーとスパイクラベンダーを交雑したものだ。イングリッシュラベンダーより収穫量が多いために安く出回っていることから、ラベンダーと謳う化粧品にはラバンジンがこっそり入っていることがある(f)ラベンダーと虫除け効果

余談だが、アロマテラピーを習い出した当初、私は甘くてリラックス作用のより強い「ラベンダー・ハイアルト」という種の精油を好んで使っていた。ハイアルトとはHigh altitude、つまり標高が高いことを意味する。この種は標高の高い場所で育ち、そういった場所には虫がいないので、虫が嫌がるスーッとした香りがなく、より甘い香りが感じられる。当時はこの種でお手製虫除けスプレーを作っていた。だから、勉強を重ねてハイアルトに虫除け効果はないと知った時には驚愕したものだ。最近では虫除け効果もあり、庶民的なお値段のラバンジンが私のお気に入りとなっている。

参考文献

  1. ナンシー・J・ハジェスキー、他(2016)『ハーブ&スパイス大事典』 日経ナショナルジオグラフィック社
  2. ジュリア・ローレス(1996)『心を癒すアロマテラピー 香りの神秘とサイコアロマテラピー』 フレグランスジャーナル社
  3. ジュリア・ローレス(1997)『ラベンダー油 精油の科学と使用法シリーズ 1』 フレグランスジャーナル社
  4. A.W. ハットフィールド(1993)『ハーブのたのしみ』 八坂書房
  5. シャーリー・プライス、他(1999)『プロフェッショナルのためのアロマテラピー』 フレグランスジャーナル社
  6. 林伸光、他(2006)『アロマテラピーコンプリートブック 下巻』 BABジャパン
  7. ルネ・モーリス・ガットフォセ 、他(2006)『ガットフォセのアロマテラピー』 フレグランスジャーナル社

writer:AYAMI

アロマティシアのオーナー。『香りと暮らし研究家』として活動。2011年より『アロマティシア』を立ち上げ、香りや自然を取り入れた暮らし方について伝える講座や活動をしている。趣味はキャンプで、週末は森の中で過ごすことが多い。

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