ハンガリー生活、はじめました
ポガーチャのある生活
writer:本宮じゅん
イースターを過ぎた頃に再び冬の寒さが戻ってきて、四月とは思わない冷え込みに凍えながら過ごしていたけれど、五月に入って今度こそやっと春の陽気に包まれて、眩しく照らす太陽と、抜けるような青い空にも恵まれるようになってきた。外に出ると、相変わらず色とりどりの花たちが心を和ませてくれる(「色とりどりの花のある生活」参照)。あまりに過ごしやすいので、(ダイエットも兼ねて)日課にウォーキングを始めたくらいだ。
もうすぐブダペストに来てから十ヶ月になろうとしているのに、まだまだ新しい発見がたくさんある。例えば最近気づいたのは、どこからともなく漂ってくるパンの焼ける匂い。
そもそもブダペストでは、花屋と同様に街のいたるところにパン屋を見かける。その数はおそらく花屋の数よりも多いだろう。特に地下鉄の主要駅のコンコースではいくつかのパン屋が並んでいるので、地下への階段を降りる瞬間から漂うその香ばしく美味しそうな匂いに、つい一つ買ってみたくなったりする。
それがだんだん暖かくなってきて、街を歩いている途中でもその匂いを感じるようになった。春になって、空気も澄んできたからなのかもしれない。というわけで、パン屋につい立ち寄ってしまう回数も増えてきた。
語学学校に行く途中も、授業の合間の休み時間お腹が空いた時のために、パン屋でいくつか買い込んでおくことにしている。一番よく訪れるのがフェレンツィエク広場(Ferenciek tere)近くの「Fornetti Food & Beverage」というパン屋。店内は広くて置いてあるパンの種類も豊富。しかも、その名の通り飲み物も売っていて中にイートイン用のスタンドもあるので、時間がない時の軽い食事にも便利だ。
中でもお気に入りなのが、「ポガーチャ(pogácsa)」。だいたいどのお店でも個数あたりではなくグラム単位で売られていて、いつも200gほど買っている。
ポガーチャは、ハンガリー名物のスコーンのような小さなパン。イーストで仕上げているからなのか、スコーンよりも食感がモチモチしている。私が買うのはもっぱらチーズ味のポガーチャなのだが、ほかにもベーコン味なども売っている。焼き立てはもちろん、少し時間が経っても翌日になっても、どういうわけか冷めても変わらずに美味しい。ぱくぱく食べているうちに、あっという間になくなってしまう。
ハンガリーのカフェについても、いつかこの連載で紹介したいのだが、「EURÓPA KÁVÉHÁZ」のように、メニューにポガーチャを置いているカフェもある。ちょっと小腹は空いたけれどケーキなど甘いものを食べたくない時に、ポガーチャはぴったりの選択肢となる。特にこのお店のジャガイモのポガーチャは、食感が一段とモチモチしていて噛みしめれば噛みしめるほどじっくり味わえるので、満足感も高い。結局やっぱりあっという間に食べ切ってしまうのだが。
そういえば、先日お世話になったハンガリー人のご自宅を訪問した際も、最初に奥様お手製のポガーチャが出てきた。この後でランチに出かけるのでひと口だけ・・・・・・と思っていたら、あまりの美味しさに遠慮するのも忘れて次々に数個平らげてしまった。やはり手作りだから、というよりも、その奥様の腕と技で美味しくなっているような気がした。帰りがけになんと残りを包んで持たせてくださった。しかも、「今度作り方を教えるからまたいらっしゃい」と仰ってくださった。何度も何度も感謝の気持ちを伝えた。
そういうわけで、そう遠くないうちに実際に習いに行く予定だ。彼女ほどでなくてもいいから、私もぜひ美味しいポガーチャを作ってみたい。そして、自分の家のキッチンも、幸せな香りでいっぱいにしてみたい。
Fornetti Food & Beverage
1056 Budapest, Duna utca 6, Hungary
+36-30-321-4042
営業時間:月~金 6:30~21:00、土・日 7:00~21:00(不定休)
※「FORNETTI」は、掲載写真の店舗の他にもハンガリー国内で多数展開
EURÓPA KÁVÉHÁZ
1055 Budapest, Szent István Krt. 7-9, Hungary
+36-1-312-2362
営業時間:8:30~20:00 (不定休)
※ ケーキ販売コーナーは朝7:00より営業
writer:本宮じゅん
2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。