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HAPPYさがしてヨーロッパ

パンをさがして

2016.07.13
writer:Fumi

日本人の日ごとの糧が米であれば、欧州人のそれはパンに違いない。パンはあまり食べないという人はいるが、パンが嫌いだという人にはまだ出会ったことはない。私は炭水化物が大好きだ。炭水化物抜きダイエットなどがちらりと流行った時はひやりとしたものだ。

スーパーフードの影響(5月のコラム参照)で健康志向が高まっているヨーロッパでは、食アレルギーも大きなテーマになっている。やたらあれはだめ、これはだめ、と避けられるアレルギー源があり、パンの原料小麦に含まれるグルテンもその一つだ。最近ではパンコーナーにグルテンフリーのコーナーがほぼ必ずと言っていいほど見られるようになった。

小麦粉の代わりとして注目されているのが日本人にはお馴染みの米粉だ。他にグルテンの含まれないトウモロコシの粉パンなども最近人気を集めている。

パン

パン食のヨーロッパ、パンにもそれぞれお国柄がある。南は白パンが主で、北へ進むとパンの色が濃くなっていく。一口にパンと言っても種類がものすごい。白パンはあのパン屋で、黒パンはあのパン屋、あ、でもクルミ入りだとあのパン屋、とこだわり始めるとパン屋の使い分けをしないといけないほどだ。

日本のお米が『ダイヤモンド褒賞』など受賞するように、パンたちも競争の世界は避けて通れない。たとえばパリ市は『La meilleure baguette de Paris』という、パリで一番のバゲットを選び出すコンクールが毎年開催される。受賞すると一年間公式にエリゼ宮(大統領官邸)で世界からの貴賓に振る舞われる。たとえば2016年のパリで一番おいしいバゲットはこちら。さっそく味見に行ったがさすがに、とてもとてもおいしかった。

2016年受賞パリ6区のLa Parisienneのバゲット

フランスのパン屋さんでは長いバゲットを半分でも売ってくれる。お値段も60円程度なので、「ドゥミバゲット、シルブプレ(バゲット半分ください)」と、いろんなパン屋さんのバゲットを食べ歩くのも楽しい。

焼きたてバゲットは本当においしい。夕飯にお使いに出された旦那さんが、買ったばかりのバゲットをつまみ食いしながら帰っていくのをよく見かける。ちなみにフランス人はパンをナイフで切らない習慣がある。引きちぎっていただきましょう。

パリの朝食イメージ

『クロワッサン』についても『パンオショコラ』についても語りたいところだがドイツのパン事情に場所を譲ろう。ドイツへ行くと白パンの肩身がだいぶ狭くなるのにすぐ気がつく。ドイツの黒パンは有名だ。ライ麦、スペルトが主となる原材料。そこへナッツやカボチャの種やらひまわりの種やらが入っていたりする。そのためパンはずっしり重く、腹持ちも断然良い。

ドイツでは『Abendbrot(夕方のパン)』という単語があり、つまり夜ご飯はパンで済ませましょう、というフランス人には理解できない食文化が存在する。文字通りパンにチーズやペーストを乗せていただいておしまいなのだ。パン好きな私もこれが毎日続くとちょっと寂しい。

黒パン

それから有名なのは南ドイツのプレッツェル。絡まったハート型みたいなあれである。右手にビールジョッキ、左手にプレッツェルというドイツ人の姿は想像に難くないであろう。

ドイツから離れ、オーストリアのウィーンでは私のパン熱がさらに高まった。パンがものすごくおいしいのだ。ただの丸パンに閉じ込められた格別の風味は言葉で表せない。ウィーンで頼むウインナーブレックファーストは『Semmel(丸パン)』にバターとマーマレード、そしてコーヒーというパターンだ。

丸パンとウィンナー

ベルリンとウィーンで残念なのは家族経営スタイルの小さなパン屋さんがほとんどないこと。チェーン店やスーパーで買うパンもなかなか美味しいのだが顔なじみの近所のパン屋さんがあるとうれしいものだ。

パリでは日本のコンビニ並みに存在するパン屋さん。そこにパン屋の店番とは思えないほど着飾ったマダムに遭遇することがある。常連客にしか笑顔を見せないそのプライドは尊敬に値する。

パリのパン屋

バゲットは半日で風味が消え去るが、黒パンは1週間おいしく賞味できる。ドイツ語圏に来たらパンのひとかたまりをお土産に、なんてのもユニークでは。

たかがパン、されどパン。小学生時代のあだ名がアンパン(マン)だったからか、はさておき、パンのことを語りだしたら止まらなくなることに気づいたので今回はこの辺にしておこう。

Fumi

writer:Fumi

ドイツ在住、Gourmieオーナー。10代の頃から、フランス、スイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地に住み、遊学。現在はベルリンとウィーンを拠点に、スイーツやデリなどのメニュー開発及びケータリングに携わる。2013年から始めた日本文化を気軽に楽しむことができるお料理教室は、ベルリンやウィーンで人気に。趣味は、読書、美術鑑賞、食べること。

HP:Gourmie / Instagram: gourmiefumi

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