ハンガリー生活、はじめました

ハンガリー生活、はじめました

ブダペスト在住ライター 本宮じゅんが綴る、ハンガリーでの日常生活エピソード。ヨーロッパの真ん中で独自の発展を遂げたこの国の観光名所やイベント、グルメ事情などを自らの体験を交えながらご紹介します。

ボガーチャのある生活

2017.05.24

ボガーチャのある生活

ポガーチャとはハンガリー名物のスコーンのような小さなパン。スコーンよりも食感がモチモチしており、チーズ味やベーコン味などもある。ハンガリーで大好きになったポガーチャについてご紹介します。

色とりどりの花のある生活

2017.04.19

色とりどりの花のある生活

ブダペストに春が訪れると色とりどりの花屋のディスプレイが目に飛び込んでくるようになった。冬の間は閉めている店もあったが、今は街のいたるところで花屋を見かける。ブダペストの花事情をご紹介します。

フォアグラのある生活

2017.03.15

フォアグラのある生活

ハンガリー生活を始める決意に背中を押したのはフォアグラだった。初めて訪れた時、人生を変えたフォアグラに出逢った。ハンガリーはフォアグラの名産国。安く美味しくフォアグラを楽しむ方法をご紹介します。

壁画のある生活

2017.02.15

壁画のある生活

ブダペストに来て壁画の多さに驚いた。壁画を探して写真に撮るのが楽しみになった。壁は巨大なアートでびっくりするような絵やメッセージが描かれていることも。歴史的ユダヤ人地区の壁画の謎についてご紹介します。

パプリカのある生活

2017.02.01

パプリカのある生活

パプリカはハンガリー料理には欠かせない。辛いパプリカ、甘いパプリカ、粉のパプリカ、色とりどりのパプリカ、色々なパプリカがハンガリーにはある。ビタミンCの発見とも関係の深いパプリカの世界をご紹介します。

クリスマスマーケットのある生活

2016.12.07

クリスマスマーケットのある生活

ブダペストに来て初めてのクリスマス。クリスマスマーケットが街中で開催されている。最も大きな規模で『ヨーロッパで最も魅力的なフェア TOP10』にも選ばれたヴェレシュマルティ広場の様子をご紹介します。

トラムのある生活

2016.11.16

トラムのある生活

ブダペストに来てから三ヶ月が経過して、初めての場所でもトラムで難なく訪れることができるようになった。こちらでは二十六系統ものトラムが街中を縦横無尽に走っている。 ブダペストのトラム事情をご紹介します。

ワインのある生活

2016.10.12

ワインのある生活

ブダペストに来てワインを飲むようになった理由はとても美味しく安いから。ここにはワインの名産地が二十以上ある。国内外の約百五十のワイナリーが出店するブダペスト・ワインフェスティバルの様子もご紹介します。

ドナウ川のある生活

2016.09.14

ドナウ川のある生活

初めてハンガリーの首都ブダペストを訪れた日から一年。お世話になった人々や住み慣れた街に未練を残しながらブダペストでの生活を始めることとなった。ドナウの真珠と呼ばれる世界遺産、ブダペストの街並みをご紹介します。

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

blog:ドナウの東か、遥かもっと東から
twitter:@motomiyajun3  / Instagram:motomiyajun

ポガーチャのある生活

2017.05.24
writer:本宮じゅん

イースターを過ぎた頃に再び冬の寒さが戻ってきて、四月とは思わない冷え込みに凍えながら過ごしていたけれど、五月に入って今度こそやっと春の陽気に包まれて、眩しく照らす太陽と、抜けるような青い空にも恵まれるようになってきた。外に出ると、相変わらず色とりどりの花たちが心を和ませてくれる(「色とりどりの花のある生活」参照)。あまりに過ごしやすいので、(ダイエットも兼ねて)日課にウォーキングを始めたくらいだ。

もうすぐブダペストに来てから十ヶ月になろうとしているのに、まだまだ新しい発見がたくさんある。例えば最近気づいたのは、どこからともなく漂ってくるパンの焼ける匂い。

そもそもブダペストでは、花屋と同様に街のいたるところにパン屋を見かける。その数はおそらく花屋の数よりも多いだろう。特に地下鉄の主要駅のコンコースではいくつかのパン屋が並んでいるので、地下への階段を降りる瞬間から漂うその香ばしく美味しそうな匂いに、つい一つ買ってみたくなったりする。

それがだんだん暖かくなってきて、街を歩いている途中でもその匂いを感じるようになった。春になって、空気も澄んできたからなのかもしれない。というわけで、パン屋につい立ち寄ってしまう回数も増えてきた。

語学学校に行く途中のパン屋
語学学校に行く途中のパン屋

語学学校に行く途中も、授業の合間の休み時間お腹が空いた時のために、パン屋でいくつか買い込んでおくことにしている。一番よく訪れるのがフェレンツィエク広場(Ferenciek tere)近くの「Fornetti Food & Beverage」というパン屋。店内は広くて置いてあるパンの種類も豊富。しかも、その名の通り飲み物も売っていて中にイートイン用のスタンドもあるので、時間がない時の軽い食事にも便利だ。

中でもお気に入りなのが、「ポガーチャ(pogácsa)」。だいたいどのお店でも個数あたりではなくグラム単位で売られていて、いつも200gほど買っている。

チーズのポガーチャ
チーズのポガーチャ

ポガーチャは、ハンガリー名物のスコーンのような小さなパン。イーストで仕上げているからなのか、スコーンよりも食感がモチモチしている。私が買うのはもっぱらチーズ味のポガーチャなのだが、ほかにもベーコン味なども売っている。焼き立てはもちろん、少し時間が経っても翌日になっても、どういうわけか冷めても変わらずに美味しい。ぱくぱく食べているうちに、あっという間になくなってしまう。

カフェ「EURÓPA KÁVÉHÁZ」のポガーチャ
カフェ「EURÓPA KÁVÉHÁZ」のポガーチャ

ハンガリーのカフェについても、いつかこの連載で紹介したいのだが、「EURÓPA KÁVÉHÁZ」のように、メニューにポガーチャを置いているカフェもある。ちょっと小腹は空いたけれどケーキなど甘いものを食べたくない時に、ポガーチャはぴったりの選択肢となる。特にこのお店のジャガイモのポガーチャは、食感が一段とモチモチしていて噛みしめれば噛みしめるほどじっくり味わえるので、満足感も高い。結局やっぱりあっという間に食べ切ってしまうのだが。

ホームメイドのポガーチャ
ホームメイドのポガーチャ

そういえば、先日お世話になったハンガリー人のご自宅を訪問した際も、最初に奥様お手製のポガーチャが出てきた。この後でランチに出かけるのでひと口だけ・・・・・・と思っていたら、あまりの美味しさに遠慮するのも忘れて次々に数個平らげてしまった。やはり手作りだから、というよりも、その奥様の腕と技で美味しくなっているような気がした。帰りがけになんと残りを包んで持たせてくださった。しかも、「今度作り方を教えるからまたいらっしゃい」と仰ってくださった。何度も何度も感謝の気持ちを伝えた。

そういうわけで、そう遠くないうちに実際に習いに行く予定だ。彼女ほどでなくてもいいから、私もぜひ美味しいポガーチャを作ってみたい。そして、自分の家のキッチンも、幸せな香りでいっぱいにしてみたい。

Fornetti Food & Beverage
1056 Budapest, Duna utca 6, Hungary
+36-30-321-4042
営業時間:月~金 6:30~21:00、土・日 7:00~21:00(不定休)
※「FORNETTI」は、掲載写真の店舗の他にもハンガリー国内で多数展開

EURÓPA KÁVÉHÁZ
1055 Budapest, Szent István Krt. 7-9, Hungary
+36-1-312-2362
営業時間:8:30~20:00 (不定休)
※ ケーキ販売コーナーは朝7:00より営業

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writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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色とりどりの花のある生活

2017.04.19
writer:本宮じゅん

冬の終わりを、ずっとずっと待ち望んでいた。昼間なのに、ほとんど見えない太陽と白い空。重いコートと帽子と手袋と、スノーブーツで武装して歩く街。そして16時台には始まってしまう、長く続く夜。そのうえ最高気温でさえ氷点下。少しでも体を慣らしてみようと、運動も兼ねてウォーキングに励んでみたものの、結局なかなか寒さに適応できず、何度も風邪を引き込んで寝込んでしまった。ブダペストに来たばかりの去年の夏は、あまりの過ごしやすさに毎日お出かけするのが楽しみで仕方がなかったのに、冬が深まるにつれて、いつしかちょっとゴミを捨てるために外に出るだけでも億劫になってしまっていた。

けれどもそんな暗く重苦しい毎日がまるでウソだったかのように、春は突然ブダペストにも訪れた。それを教えてくれたのは、眩しく照らす太陽と澄み渡る青い空、そして近所の花屋のディスプレイだった。

街の花屋さん

街の花屋さん

学生時代に留学したドイツのライプツィヒもそうだったけれど、ここハンガリーのブダペストでも、街のいたるところで花を売る店舗やスタンドをよく見かける。地下鉄の駅へと続く通路に、トラムの停留所の近くに、大きな広場の一角に。半日出歩くだけでも何軒も目にすることだろう。しかも夜遅くまで営業している店も多い。ただ、当然といえばその通りなのだが、冬の間は閉めている店もあり、その存在をほとんど意識することはなかった。

それが春になった瞬間に、急に色とりどりの美しい花たちが目に飛び込んでくるようになった。ほんの少し前まで真っ白、もしくは灰色だった景色が、まるでキャンバスになったかのように鮮やかな色でいっぱいとなった。赤やピンクにオレンジ、黄色や白に紫と、さまざまな色を目にしているうちに、いつしか塞ぎ込みがちになっていた気分もあっという間に上向きになった。コートなしでも快適な日も続いて、新しい季節への希望と期待がどんどん膨らんでいった。

美しい花に囲まれる毎日

美しい花に囲まれる毎日

もちろん花屋だけでなく、公園や広場、道の途中に設置された花壇でもカラフルな花たちが街を彩ってくれる。いつの間にか、文字通り花に囲まれた毎日になっていた。そんな生活がとても嬉しくて、もしベランダか庭があったら自分でも育ててみたいくらいなのだが、残念ながら今住んでいるところにはどちらもない。だから、その代わりに出かけている間になるべく多くの花を見て、その姿を目に焼き付けている。綺麗な花を見つけるたびに足を止めて写真を撮ってみる。だけど何度撮ってもやっぱり、実物の美しさには及ばない。

素敵な花束のプレゼント

素敵な花束のプレゼント

種や苗から育ててみるのは諦めたけれど、せめて部屋に鉢植えか切り花を飾ろうかと思っていた矢先に、ピンクのバラの花束をいただいた。日本語を教えている生徒さんたちからの、誕生日のお祝いに。教室の前でなんだかみんなそわそわしている様子には気づいていたものの、その日は誕生日当日ではなかったので、本当に思いがけないサプライズだった。花束を抱えながら帰りのバスに乗り、家へと向かう途中、いつもと同じ道のはずなのにそれだけでとても特別な気分になれた。今はキッチンで、このコラムを書いている間も、変わらずに私の心を癒してくれている。

ブダペストでも夜遅くまで開いている花屋が多いのは、それだけ遅い時間でも、花を買う人があとを絶たないからだと思われる。友人からは、「(男性陣が)誕生日や記念日でなくても、いつでも恋人や奥さんにプレゼントできるためらしい」と聞いていたし、たぶんその通りなのだろう。花は人々の生活の中で必要不可欠、むしろ当たり前の存在になっているのだ。最近は春を通り越してすでに初夏の陽気を感じる日もある。まだまだこれからもしばらくは、さまざまな花たちがブダペストの街と私たちの毎日を鮮やかに彩ってくれることだろう。

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writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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フォアグラのある生活

2017.03.15
writer:本宮じゅん

改めて思い返してみても、私がハンガリーでの生活を始めるという決意に大きく背中を押してくれたのは、フォアグラだったかもしれない。2015年9月、初めてハンガリーを訪れた旅行で、私は「人生を変えたフォアグラ」に出逢った。

それは、ブダペストの中心地にある「コム・シェ・ソワ(Comme chez soi)」という地中海料理レストランでのことだった。甘い香りとともに、フォアグラのグリルが豪快にフライパンごと目の前にやってきた。その時の衝撃と感激は、一年半経った今でも鮮明に憶えている。こんなに大きく、こんなにボリュームたっぷりのフォアグラを、私は初めて見たのだった。

人生を変えたフォアグラ1
人生を変えたフォアグラ

衝撃と感激は続く。アツアツで大ぶりのフォアグラは、一緒にフライパンの中で加熱されていたリンゴのソテーとともに、予めサーブされていたマッシュポテトに乗せられた。その盛り付けの豪快ながらも繊細な美しさに、思わず見とれてしまったのだった。 人生を変えたフォアグラ3

そして、最初の一口を口に入れた瞬間、衝撃と感激は最高潮に達した。遠慮がちに小さめにカットしたものの、それだけで濃厚な味わいが口いっぱいに広がった。あまりの美味しさに、心臓の高鳴りも加速した。私なんかが、こんなに幸せになって良いのだろうか。舌でゆっくり味わいながら、今までの自分自身の至らなさを深く反省した。これからお世話になっている周りの人々にできる限り恩返ししていこう、優しく接していこう、そう心に誓った。そうでもしないと値しないかもしれないと思うくらい、極上の体験だった。まさに、人生を変えた瞬間だった。 人生を変えたフォアグラ2

というわけで、その約十一ヶ月後、私はハンガリー・ブダペストでの生活を始めた。またあのフォアグラに出逢うために・・・・・・なんて、もちろんほかの理由もたくさんあったからなのだけど。


ところで、ハンガリーはフォアグラの名産国でもある。生産量ではフランスに次いで世界第二位にランクイン。実際「フランス産」と記載してあるフォアグラの半分以上は、ハンガリーで飼育されたアヒルやガチョウを輸入して取られたとのことで、実質上はハンガリーが世界第一位という考え方もあるようだ。街中の多くのハンガリー料理レストランには、必ずといってもよいほど、 メニューにフォアグラがある。メインだけでなく、前菜としても気軽に味わえるのが嬉しい。しかも価格もかなりリーズナブルだ。先述の「コム・シェ・ソワ(Comme chez soi)」のフォアグラのグリルは、フライパン丸ごとリンゴのソテーとマッシュポテトも付いて日本円にして約2,800円(※2017年3月現在)。そのうえ、三人でシェアしてちょうどよいくらいのボリューム。心ゆくまで堪能できるのだ。

さらにリーズナブルにかつ美味しくフォアグラを楽しめる方法として、ハンガリー料理に詳しい友人に家庭での調理法を教えていただけることになった。市場で新鮮な生のフォアグラを塊のまま買ってきて、ホームパーティーを開催。ちなみにその時、約700gで日本円にして約2,000円だった。うち半分くらいを1センチメートル幅にスライスしてフライパンへ。

おうちでフォアグラパーティー
おうちでフォアグラパーティー

適当なタイミングで甘口のトカイワインを注ぎ入れ、アルコールの力で特有の臭みを消した。フォアグラからにじみ出る油を利用して、スライスした黄桃も一緒にソテー。キッチン中が甘い香りと煙に包まれたので、玄関のドアまで全開にして調理を続けた。 友人の的確なレクチャーのおかげで、自分で作ったとは思えないくらい素晴らしい出来栄えとなった。四人で思う存分いただいて、残った分は後日フォアグラリゾットにした。そして、その後しばらくの間もキッチン中にフォアグラの香りは充満しており、余韻に浸り続けることができた。

五月にもフォアグラがメインのホームパーティーを企画している。友人たちとともに過ごす贅沢なひとときを、今から心待ちにしている。

コム・シェ・ソワ(Comme chez soi)
1051 Budapest, Aranykéz utca 2. Hungary
+36-1-318-3943
営業時間:12:00~0:00 (日曜定休)

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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パプリカのある生活

2017.02.01
writer:本宮じゅん

ハンガリー料理にはパプリカが欠かせない、というのは日本にいる時から聞いてはいたけれど、ブダペストに住み始めて三ヶ月もするうちに、私の生活にとってもパプリカは欠かせない存在になっていた。

市場でパプリカを

ビオピアツ(有機食品市場)にて
ビオピアツ(有機食品市場)にて

私が通っているハンガリー語の語学学校は、ブダペスト観光の主要スポットにもなっている『中央市場』の近く。授業が終わるとまっすぐに向かって、習いたてのハンガリー語で店員さんと会話を交わしながら、日々の食材を調達している。季節によって少しずつ品揃えが変化している野菜・果物売り場でも、山積みにされた色とりどりのパプリカはいつも目を和ませてくれる。

甘い味の品種の中から、赤、緑、黄色、白と数種類のパプリカを選んで買う。色が多いと料理の仕上がりの見た目も華やかになる。生のままスライスしてスティックサラダにすることもあるし、焼いたり炒めたり調理することもある。熱を加えると甘みが増してグンと美味しくなり、ただオーブンで焼いただけでも絶品の一皿になる。

毎週土曜日は、ドナウ川西岸のブダ地域で開かれる『ビオピアツ』という有機食品市場まで足を運ぶ。さすがにどの商品も価格は若干高めだ。でもここで買うパプリカは、普段食べるものよりもどこか味が濃い感じがする(気のせいかもしれないけれど)。それにしても味、大きさ、形、色とさまざまなバリエーションがあって、ひとつひとつ手にとっても個性が見えてくるようだ。わざと面白い形や色をしているものを買うことが、週末のちょっとした楽しみになっている。

パプリカ粉とハンガリー料理

お土産コーナーのパプリカ粉
お土産コーナーのパプリカ粉

市場で目にするのは生のパプリカだけでなく、お土産物コーナーにはパプリカ粉も豊富に並んでいる。もちろんパプリカ粉はスーパーでも棚いっぱいに売られていて、価格もずっと安い。ただ、やはりお土産用のものはどれもパッケージがかわいらしく、コレクションしたくなるくらいだ。

伝統的なハンガリー料理の代表格『グヤーシュ』は、パプリカ粉をたっぷり使ってお肉や野菜と一緒にじっくり煮込んだスープ。日本の家庭料理においてのお味噌汁のような存在で、家庭やお店ごとに味が異なるという。グヤーシュ好きの友人の影響を受けて、私も初めて訪れるレストランでは必ず注文するようにしている。どのお店のものも、それぞれの美味しさがあってなかなかベストを決められない。

>伝統的なハンガリー料理、グヤーシュ
グヤーシュ(※約四人分)

パプリカ粉を使ったスープでもうひとつ、『ハラースレー』という魚のスープがある。海に面していないハンガリーでは、ドナウ川やティサ川で獲れる淡水魚が料理に使われている。ハラースレーには、鯉(コイ)やナマズなどをぶつ切りにしたものがゴロゴロ入っている。魚の出汁の旨味がしっかり効いていて、日本人の味覚にもぴったりな美味しさだ。

魚のスープ、ハラースレー
ハラースレー(※約四人分)

ちなみに、レストランではグヤーシュにもハラースレーにも辛パプリカのスライスやペーストが添えられて、途中で少しずつ加えながら味の変化を楽しむこともできる。ハンガリーに来たばかりの頃は、できるだけ辛パプリカを避けていた。市場でも、甘い味のものか必ず確認してから買っていた。でも、試しているうちにその刺激にも慣れてくるもので、最近では辛パプリカがないと落ち着かないくらいだ。自宅にも瓶詰めのペーストを常備していて、スープにラーメンにパスタにと、独自の使い方を楽しんでいる。

辛パプリカのペースト
辛パプリカのペースト

パプリカとビタミンC

実は、ビタミンCの発見でノーベル賞を受賞したセント=ジェルジ・アルベルトはハンガリー出身。南部の街セゲドの大学で研究していた頃に、その地の名産のパプリカから発見したといわれている。さらに、パプリカに含まれるビタミンCは加熱しても壊れにくいことも判明した。そう考えると、パプリカは健康や美容にも嬉しい食材でもある。

そういえば、日本では長年肌荒れに悩まされ続けていた私も、ハンガリーでの生活を始めてからは、びっくりするくらい調子が良い。こんなに乾燥した気候であるにもかかわらずだ。基礎化粧品も全く変えていない。 もしかしたら、毎日ほとんど欠かさず口にしているパプリカのおかげなのかもしれない。なんて勝手に思い込んでいる。

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2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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クリスマスマーケットのある生活

2016.12.07
writer:本宮じゅん

12月に入り、ここ数日のブダペストはとてつもなく寒い。ついに最高気温が摂氏5度を切り、最低気温は氷点下となった。建物の中にいる限りは暖房が充分にきいているのでむしろ暑いくらいだが、外に出ると厚手の素材の服を重ね着しないと耐えられない。

北海道よりも緯度が高いので少しは覚悟していたものの、ここまでとは予想もしていなかった。さらに日照時間もぐんと短くなって、午後4時にもなれば外は真っ暗だ。寒い上に夜も長いので、ついつい出不精になってしまいがちになってしまっている。

でも、この時期だからこその出かける楽しみがある。街ではクリスマスマーケットが開催されているのだから。

ブダペストのクリスマスマーケット

クリスマスマーケットはドイツのドレスデンが発祥といわれており、歴史の流れとともに周辺国にも広まったようだ。学生時代に留学していたライプツィヒでも、街の中心地の大きな広場で開催されていて、当時は毎日のように足を運んでいた。ヨーロッパ、もとい外国でのクリスマスは初めてで、あまりの素晴らしさに感動して、思わず涙が出て来てしまったのは今でも憶えている。

そして、ブダペストに来て初めてのクリスマスシーズン。ハンガリー語でクリスマスマーケットは、『カラーチョニ・ヴァーシャール(karacsonyi vasar)』といって、今や街中のいたるところで開催されている。昼夜問わず多くの人で賑わい、特に夜は煌びやかなライトアップでブダペストの街をさらに美しく彩る。中でも最も大きな規模で開催されているのがヴェレシュマルティ広場(Vorosmarty ter)だ。

ヴェレシュマルティ広場のクリスマスマーケット

ヴェレシュマルティ広場のクリスマスマーケット

世界遺産にも登録されているブダペスト地下鉄1号線の終始駅から地上に出ると、まず目に入るのが、東京にも進出しているカフェ兼レストラン『ジェルボー(Gerbeaud)』の荘厳な建物。ヴェレシュマルティ広場はその建物を背に広がっており、ブダペスト随一のショッピングストリートであるヴァーチ通り(Vaci utca)へと続いている。ドナウ川にかかる鎖橋も近く、観光客にも大人気のスポットだ。

ヴェレシュマルティ広場

広場には大きなツリーが設置されて、さまざまな屋台で埋めつくされる。民芸品や雑貨、食料品の屋台にハンガリーの名物料理やホットワインの屋台。そもそもクリスマスマーケットというものは、どのヨーロッパの都市で開催されているものも、似たような印象を受けてしまいがちだ。それに屋台が並ぶ様子を見ていても、ブダペストの大きな広場でよく開催されているお祭りで見かけるものと、あまり変わらないようにも感じる。

けれども、このヴェレシュマルティ広場のクリスマスマーケットは特別だ。色とりどりのデコレーションがライトアップとともに明るく輝く景色は幻想的そのもの。中央には広大なテラスが設置され、ハンガリー名物料理に温まりながら少し高い場所から広場を見渡すことができる。公式ホームページにも記載してある通り、『ヨーロッパで最も魅力的なフェア TOP10』に選ばれたのもうなずける。

どこまでも続くクリスマスマーケット

ヴェレシュマルティ広場と隣接するデアーク・フェレンツ通り(Deak Ferenc utca)にもクリスマスマーケットは繋がっている。"Fashion Street"と英語で呼ばれるこの通りを見上げると、プレゼント箱やバッグ、ハイヒールなどをモチーフにしたラグジュアリーなイルミネーションが施されている。白と金色で輝く世界に囲まれていると、なんとなく自分にクリスマスプレゼントを買ってみたくなってしまう。

デアーク・フェレンツ通り(Deak Ferenc utca)のクリスマスマーケット

三分ほど歩いて通りを抜けると、右手に見えるデアーク・フェレンツ広場(Deak Ferenc ter)にも、左手に見えるエルジェーベト広場(Erzsebet ter)にも、クリスマスマーケットの屋台は続いている。エルジェーベト広場の前を通り過ぎてさらに歩くと、ブダペストで最も高い建造物のひとつ聖イシュトヴァーン大聖堂(Szent Istvan Bazilika)に着いた瞬間、また息をのむような美しい光景が広がる。

そして、聖イシュトヴァーン大聖堂

聖イシュトヴァーン大聖堂(Szent Istvan Bazilika)

大聖堂の前の広場には、大きな赤いクリスマスツリーと、そのまわりを取り囲むように小さなスケートリンク。時間は決まっているが、十四歳以下の子供は無料でスケートを楽しめるようだ。屋台のラインアップは他の場所とそう変わらないが、近隣にあるワインバーの屋台もちらほら見かけ、ホットワイン以外のアルコール類も楽しみやすい雰囲気を感じた。

日没後には大聖堂の正面がスクリーンとなって、プロジェクションマッピングショーが開催される。大音響のBGMが流れる中、壮大な映像を目の前にしているうちに、時が経つのも忘れてしまいそうだ。

クリスマスシーズンは、これからが本番。現時点でまだ始まっていない場所も少なからずある。また、クリスマス後も年末年始まで開催している場所もあるようだ。ギリギリまで楽しんでみたい。

参考
ブダペスト・カラーチョニ・ヴァーシャール 公式ホームページ(英語)
聖イシュトヴァーン大聖堂のアドヴェント祭 公式ホームページ(英語)

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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トラムのある生活

2016.11.16
writer:本宮じゅん

学生時代から二回の転職を経ても、ブダペストに来る前での十数年間、私の毎日には『JR山手線』が欠かせない存在だった。乗車区間はその時の居住地と通学先・通勤先の最寄り駅によって変動していたが、朝の通勤時も夜の帰宅時も日中の移動時も、黄緑色(ウグイス色)の車体に見守られているという安心感に包まれていた。

ブダペストに来てから三ヶ月が経過した今、それはすっかり市内交通の『4番・6番トラム』に置き換わって、鮮やかな黄色の車体が私を目的地へと送り届けてくれている。

4番トラム
4番トラム

ドナウ川の西側のブダ地域から東側のペシュト地域を経てまたブダ地域へと、大環状通りを中心にブダペストの主要スポット間をぐるりと円を描くように走る『4番・6番トラム』。24時間運行しており、ドイツ・シーメンス社製の新型車両が導入されている。ちなみに先ほどから二つの路線を併記しているのは、十九ある停留所のうち十七の停留所の区間が、同じレールの上を走っているからだ。デザインも同じなので、普段の生活ではどちらに乗るのかは気にすることもなく、来た方にそのまま乗り込んでいる。

途中の停留所で地下鉄の全ての路線と乗り換えのできる両路線は、世界有数の混雑する路線ともいわれており、平日朝夕のラッシュ時は1分~1.5分間隔で運行。確かに東京の満員電車を思い出すほどの混雑具合となる。乗れなくてもすぐ次が来るので焦ることはない。なんとなく、山手線を思い出す。

ところで、つい先日まで『6番トラム』の路線の一部では、1956年のいわゆる『ハンガリー動乱』から六十周年を記念した『1956番トラム』が走っていた。

1956番トラム
1956番トラム

おそらく当時も同様の車体が走っていたのだと思われる。このトラム、走っている姿を目にすることはあってもなかなか乗る機会に巡りあえなかった。やっと乗れた時は、何かの抽選に当たったような気分になったくらいだ。ただ、乗り心地はやはりいつもの低床式の車体の方が快適だった。

ブダペストではもちろんそのほかにも、合計二十六系統ものトラム(※2016年11月現在)が街中を縦横無尽に走っている。 中でも観光で訪れる人々にとって一番身近なのは『2番トラム』だろう。

主要観光地を結ぶ2番トラム
主要観光地を結ぶ2番トラム

ペシュト地域を走るこの路線は、『4番・6番トラム』とは違って共産主義だった時代を彷彿されるレトロな車体。途中、『国会議事堂』、『セーチェニ鎖橋(Széchenyi Lánchíd)』、『ヴィガドー(Vigadó)』という文化ホール、『中央市場(Nagycsarnok)』の近くなど、ブダペストの主要観光スポットをまわることができる。

その上ほとんどの区間ドナウ川沿いを走るので、窓の外の眺めは絶景だ。ドナウ川を行き来する客船に、対岸には『王宮の丘』や『ツィタデッラ(Citadella)』という要塞が見える。私はブダペストの市内交通が乗り放題の一ヶ月定期券を持っているので、時々気分転換にこの路線に乗ってドナウ川の景色を楽しんでいる。思わず息を呑むような美しさに、ガタゴトと容赦なく揺れる乗り心地の悪さもまったく気にならない。もしブダペストを訪れることがあったら、ぜひ乗っていただきたい路線だ。

2016年3月の終わりに「ブダペストに世界で最も長いトラムが導入された」というニュースを聞いた時、私はまだ日本にいた。どれだけ長いのだろうか、その姿を一刻も早く見たいという衝動に駆られていた。導入された『1番トラム』は、『4番・6番トラム』よりずっとブダペストの外側を走っていて、普段の生活ではほとんど利用することはない。だからブダペストに来て間もないうちに、トラムと地下鉄に乗り継いで『アールパード橋(Árpád híd)』まで行って、その車両がやってくるのを待ち構えていた。

世界で最も長い!? 1番トラム世界で最も長い!? 1番トラム

確かに長かった。車両の長さが。一編成でなんと55.9mもあるとのことで、撮影する角度を工夫してファインダーになんとか収まったという感じだ。それぞれ長さが違いながらも、数えてみると九両編成もあった。どの車両に乗ろうか迷ってしまうくらいだった。

とりあえず、国外にも行く長距離バスターミナルがある『ネープリゲト(Népliget)』まで乗ってみた。随分長い距離を走っていたように感じたが、それもその通り、総走行距離は16.6kmと、ブダペストで最も長い距離を走る路線なのだ。途中旧型の車両とも何度もすれ違った。街の中心地では見かけることがないけれども、ブダペストの街が徐々に新しい時代へと進化していく上での象徴となっているような気がした。

こちらでの生活にもようやく慣れはじめ、最近は初めての場所でもトラムで難なく訪れることができるようになった。トラムはハンガリー語では『ヴィラモシュ(Villamos)』という。その言葉の響きも、力強いようでどこか優しく感じられるのが不思議だ。

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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ワインのある生活

2016.10.12
writer:本宮じゅん

東京時代の私をよく知っている人にはなかなか信じてもらえないかもしれないけれど、ブダペストに来て約二ヶ月、ほぼ毎日のようにワインを飲んでいる。ほんの少し前まで、新橋や田町の馴染みの居酒屋で、ビールやホッピーにハイボールの分厚いジョッキを豪快に握りしめていた私は今、遠く離れたブダペストのワインバーで、赤ワインの脚の細いグラスをそっと手にしている。なんて、すっかり気取った雰囲気になってしまっているのが、自分でも不思議なくらいだ。

カダルカ(Kadarka Bar)
お気に入りのワインバー『カダルカ(Kadarka Bár)』にて

ブダペストに来てワインを飲むようになった理由は二つある。ひとつは『とっても美味しい』から。そしてもうひとつは『とっても安い』から。シンプルにただそれだけだ。東京でも最近はカジュアルなワインバーが増えているけれど、こちらでは美味しいワインをさらに気軽に楽しめる環境に恵まれている。街中にはハンガリー語で『ボロゾー(Borozó)』と呼ばれるワインバーが無数にある。日本円にして一杯200円弱という手頃な価格から取り揃えてあるので、新しいワインにもどんどん挑戦してみたくなってしまう。

カダルカ(Kadarka Bár)の店内
『カダルカ(Kadarka Bár)』の店内
 

ハンガリーのワインというと、『世界三大貴腐ワイン』としても愛されているトカイ・ヘジアーヤ地方の『トカイ・アスー』をイメージされる方が多いと思うが、国内には他にも赤ワインや白ワインの名産地が最低でも二十地域以上あるという。そして、わざわざワインバーやワイン専門店に行かなくても、近所のスーパーでさえ品揃えは豊富。しかも日本だと一本3,000円相当のクオリティのワインが、なんと300~500円程度で買えてしまうのだ。安いものだと一本100円程度からある。さすがにそういうのに挑戦するには、やっぱりちょっと勇気がいるのだけどね。

おすすめワイン
私オススメのワインたち

今年の冬に約一ケ月ブダペストに滞在した帰り、赤ワイン好きの叔父へのお土産に写真中央の『エグリ・キュヴェー(Egri Cuvée)』を買って帰った。その後叔父から、「こんなに美味しくて高価なワインをありがとう」というメールを受け取ったのだが、実は一本500円以下だったということは口が裂けても言えない。このワインの名産地エゲル地方では、『エグリ・ビカヴェール(Egri Bikavér)』という『牡牛の血』という意味で数種類のぶどうを混ぜて造られた、しっかりとした味わいの赤ワインもあるので、今度はそちらをお土産にしようと思っている。

そんなこんなで毎日のようにワインバーや自宅で満喫している上に、九月初旬にはブダ王宮で開催された『ブダペスト・ワインフェスティバル(Budapest Borfestivál)』にも訪れてみた。

ブダ王宮
ブダペスト・ワインフェスティバル(Budapest Borfestivál)の会場となったブダ王宮
 

毎年恒例で開催されていて、今年でなんと二十五年目。ハンガリー国内の名産地はもちろん、オーストリアやフランス、ジョージア(グルジア)といった国外の名産地も含めて約百五十のワイナリーが出店し、赤・白・ロゼと各ワイナリーの名作を心ゆくまで堪能できるワインの祭典だ。

ブダペスト・ワインフェスティバル
ブダペスト・ワインフェスティバル(Budapest Borfestivál)にて
 

ブダ王宮の華やかなライトアップのもと、『ヴィンアゴラ(VinAgora)』という国際ワインコンペティションで受賞したワインもテイスティングでき、各ブースをまわって飲み比べしている間に、気づくと十杯以上飲んでしまっていた。

ブダペスト・ワインフェスティバル
ブダペスト・ワインフェスティバル(Budapest Borfestivál)では食事メニューも豊富
 

とはいえ、こんなに素晴らしい環境にいるのにもかかわらず、まだまだワインの知識に関しても初心者レベルなのは相変わらず。なんとなく、口当たりの軽さと重さ、酸味や甘みの強弱、余韻の方向性など、違いは少しずつわかるようになってはきたものの、ではどういったワインが一番自分の好みに近いのかは、うまく形容できていない。というか、ワインに関しての自分の好みというものが、自分でも把握できていないのが現状だ。

まあ、今後もこのまま毎日のように様々なワインを飲み続けているうちに、新しい世界が開けてくるのかもしれないと前向きに考えながら、初心者レベルの私も結構楽しめている。だから、ワインがお好きな方はぜひ、ハンガリーにいらして各地のワインを堪能していただきたい。お好みのワインが、どこかできっと必ず見つかるから。

カダルカバー(Kadarka Bár)
1061 Budapest, Király utca 42. Hungary
+36-1-266-5094
営業時間:16:00~0:00 (不定休)

ブダペスト・ワインフェスティバル(Budapest Borfestivál)
1014 Budapest, Szent György tér 2. Hungary
次回は2017年9月7日~10日の4日間、ブダ王宮にて開催

ヴィンアゴラ(VinAgora)

motomiyajun

writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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ドナウ川のある生活

2016.09.14
writer:本宮じゅん

先ほどiPhoneに保存していた写真を整理していたところ、初めてハンガリーの首都ブダペストを訪れた日から、ちょうど一年経ったことに気付いた。遅い夏休みの旅行でオーストリアのウィーンからブダペストに入り、街に流れるドナウ川の壮大さ、そして『ドナウの真珠』とも呼ばれるブダペストの街そのものの美しさに心を奪われてしまった瞬間は、今でもはっきりと覚えている。

その次の年の夏、日本でお世話になった人々や住み慣れた街やその他諸々の未練を残しながら、私はブダペストでの生活を始めることとなった。それから約一ヶ月。最初のうちよくわからなかった言葉や地理感覚も、少しずつ自分のものとして身に付いている実感はある。それでもまだまだ初心者気分のまま、この街で暮らしている。

鎖橋と王宮
鎖橋と王宮

ブダペストは元々ドナウ川西岸に広がるオーブダ、ブダ、東岸に広がるペシュトの三つの地域が統合されて一つになった街。文字通り、ドナウ川を中心に形成されている街だ。両河岸の美しい歴史地区をはじめとした一帯は、『ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り』として世界遺産に登録されている。

天気の良い日、ドナウ川のほとりは贅沢な散歩コースになる。夏の直射日光は肌を刺すような暑さだけれども、カラッとした空気と心地よい風でむしろ快適なくらいだ。

ペシュト側から対岸に王宮のあるブダの丘を眺め、川を行き来する観光船を眺め、『鎖橋』にたどり着く。橋のたもとを護るライオン像が何か話しかけてくれているような気がする。ある時は「こんにちは」、ある時は「元気かい?」、ある時は「今日もお疲れさま」と。このライオン像には舌がないように見えるのだけど、実際は口の奥に彫られているという。どこにあるのか探したいのだけど、高い所にいるのでなかなか届かない。

鎖橋の向こうのブダの丘には、王宮以外にも見所が多い。特に尖塔と回廊から成る白亜の美しい『漁夫の砦』は、各国からの観光客でいつも賑わっている。

漁夫の砦
漁夫の砦
 

二十世紀初め、この地域の美化計画の一環として建造したこの砦は、元々ドナウ川の漁師組合が守り、かつて魚の市場が立っていた場所ということにちなんでその名が付けられたという。当時の名残は少しも感じないのだが、テラスからの眺めは最高だ。

漁夫の砦からの眺め
漁夫の砦からの眺め

今度は対岸にペシュト側を眺める。ペシュト側はほとんどが平地なので、割と遠くまで見渡せる。ここに来るといつも日本人旅行客の団体に遭遇する。日本語の会話が聞こえてくると少しだけホッとする。失礼になってしまうから、会話の内容までは聞かないようにしている。それでもここで偶然誰か知っている人に出会えたらいいのに、と微かな期待を抱いてみたりしている。

川岸に見えるひときわ巨大で宮殿のような豪華絢爛な建物は、ハンガリーの立法府、『国会議事堂』だ。

国会議事堂
国会議事堂

こちらも二十世紀初めに建設された、ドームを中央に美しく左右対称にファサードが広がる『ネオゴシック』という建築様式の建物。全長は269mもあり、高さは96mとブダペストで最も高い建物の一つだ。ちなみにドナウ川に面しているこちらの面は実は裏面で、正面玄関はその反対側にある、ということを最近になって知った。確かに入口はどこにも見えない。

『国会議事堂』の他にもう一つ、ブダペストで最も高い建物がある。それが『聖イシュトヴァーン大聖堂』だ。こちらもペシュト側、先ほどの『鎖橋』の近くにあり、高さは96m。王宮の丘からは、ドームとその両隣の尖塔の上の方だけが見える。

聖イシュトヴァーン大聖堂
聖イシュトヴァーン大聖堂

ハンガリー初代国王イシュトヴァーン一世を祀るために十九世紀半ばに建設が始められたが、完成したのは二十世紀の初め。ちょうど『漁夫の砦』や『国会議事堂』と同じ時期で、当時は各地で大規模な工事が行われていたことが伺える。そして、まだまだ街は成長を続けている。

毎年8月20日は、イシュトヴァーン一世が列聖された日にちなみ、ハンガリーの建国記念日『聖イシュトヴァーンの日』として祝日となっている。この日は朝から街全体がお祭りモードとなり、どこに行っても人・人・人で大混雑だ。メインイベントは夜九時から始まるドナウ川上の花火大会。ライトアップされた夜景に、天高く打ち上がる花火がダイナミックかつ華麗に彩りを添える。

花火1

日本の花火大会にはすっかり乗り遅れてしまったのだが、間近で美しく咲かせる数々の花火に魅了されているうちに、やっぱりここに来て良かったのだと実感した。

『聖イシュトヴァーンの日』が終わると街は一気に夏の終わりの雰囲気となり、空気にもどこか秋の気配を感じるようになると聞いていたものの、今年に限っては九月に入っても気温三十度を超える日も続き、もう少しだけ夏の余韻に浸っている。

これから秋を迎え、冬になり、そして春と、季節を追うごとにドナウ川とこの街はどのような表情を見せてくれるのだろう。今から心を躍らせている。

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writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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壁画のある生活

2017.02.15
writer:本宮じゅん

ブダペストの中心地的存在ともいえるデアーク・フェレンツ通り駅から少し歩くと、歴史的ユダヤ人地区が広がっている。ヨーロッパ最大規模というシナゴーグを中心にユダヤ教に関連する施設が点在していている一方で、人気のバーやレストランも数多くある。中でも老朽化した建物をポップにアレンジして営業している「廃墟バー」は観光客にも大人気で、夜ともなれば大賑わいだ。世界遺産にも登録された歴史的景観地区とはまた違った魅力が感じられる。

廃墟バー「シンプラ・ケルト」
廃墟バー「シンプラ・ケルト」

聞いたところによると、この地区は資金不足のために戦後の再開発がなかなか進んでいないようで、確かに老朽化した建物や空き地を多く見かける。しかしながら、それらをうまく活かして営業しているバーやクラブも増えている。ボロボロの建物にボロボロの椅子やテーブルが置かれていながらも、なんとも新しくてオシャレな空間になっている。屋台が並ぶ空き地もあり、天気の良い日にオープンエアで飲むビールは格別に美味しい。

そしてその傍らで、建物にダイナミックに描かれた壁画の数々が、この地区の雰囲気をさらに特徴付けている。

斬新なタッチの壁画
斬新なタッチの壁画

実際初めて足を運んだ日に印象に残ったのは、ユダヤ教関連施設でも廃墟バーでもなく、壁画の多さだった。大きくて目立つものもあれば、なかなか気づきにくい場所にもあったりする。家からも歩いて行ける距離なので、いつしか散歩を兼ねて壁画を探しまわり、ひとつひとつ写真に撮って集めていくのが楽しみになっていた。既に十五ヶ所ほど見つけたものの、それでも訪れるたびに新しいものに遭遇するので、もしかしたらまだまだ増え続けているのかもしれない。

一番びっくりしたのが、この建物の側面に描かれた壁画だった。最初遠くから見たとき、それが壁画だということに気づかなかった。屋根と上の階の窓の外に人がいるのを見つけて、あんな高いところで何をしているのか不思議になって近づいて見たところ、壁一面が全部絵だった。それくらい、正面の色合いとデザインから見事に繋がっている。もっと下の方、地上階のお店を先に見ていればすぐに気づいたのかもしれないのだが。

側面の部分が壁画
側面の部分が壁画

ハンガリー語が少しずつわかるようになるにつれて、これらの壁画についての情報もわかるようになってきた。どうやらこの地区が位置するブダペスト7区と民間企業との協業で、建物の防火壁をリノベーションするというプロジェクトによる作品とのこと。アート性が高いだけでなく、火災から護ってくれるという実用性も備えているようだ。

ルービックキユーブの壁画
ルービックキユーブの壁画

シナゴーグの近くで見かけたカラフルな壁画は、近くで見たときには気づかなかったが、後で写真をよく見たところ、巨大な「ルービックキューブ」だった。子どもの頃によくこれで遊んでいたのを思い出した。発明者のルビク・エルネー氏はハンガリー人。左下に"mindig van megoldás és nem is csak egy"と、彼の言葉が書いてある。意味は、「いつでも解決方法はある。ただしそれがひとつとは限らない」。なんだかとても元気付けられる言葉だ。

もしブダペストを訪れる機会があったら、ぜひこの地区にも足を運んでいただきたい。細い通りのあちらこちらを歩いているだけで、新しい発見に出会えることだろう。

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writer:本宮じゅん

2016年7月末にハンガリーのブダペストに移住したばかりの新米ライター。大学在学中に1年間ドイツのライプツィヒ大学に交換留学し、卒業後は外資系化粧品メーカー・広告代理店・外食産業と、業界が違いながらも通算14年近くマーケティング業務に携わった後、ハンガリーのブダペストへ。趣味は料理、街歩き、街歩きのついでに飲むビール。

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